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甲斐節炸裂

旅籠屋日記より転載


流れにもムードにも乗りません


2011年から寄稿している「月刊 ホテル旅館」の年頭所感、9年目となる今回は、以下のような原稿を寄せました。

 流れにもムードにも乗りません

 毎年同じような書き出しになりますが、日本にも、アメリカのMOTELのような車旅行者が誰でも気軽に利用できる宿泊施設をと願い、「ファミリーロッジ旅籠屋」をスタートさせてから24年、全国各地約70ヶ所で直営店を展開するに至りました。
 昨夏は、西日本豪雨や台風の襲来、記録的猛暑や北海道地震などの影響で苦戦しましたが、秋以降は好調です。利用者も累計で延400万人を超え、日本初で唯一のMOTELチェーンとして少しずつ認知されるようになり、役所や業界の方とお会いする機会も増えてきました。その中で「ファミリーロッジ旅籠屋」の特徴やこだわりが鮮明になることがあります。

  1番目はリピーターの多さです。60%以上が再利用なのですが、これは異常に高い数字のようです。お客様に気に入っていただいている証しなので、たいへん嬉しく誇らしく思うと同時に、日本におけるMOTELの潜在需要の大きさや確かさを示している数字だと受け止めています。すなわち、短期的な業績や社会の流れやムードに左右される必要はないし、そうすべきでもないということです。

  2番目は予約サイトへの依存率が15%未満ときわめて低いことです。85%以上が直接予約なのです。10年ほど前、創業時からの「一物一価」のポリシーを曲げ、過渡的な措置としてOTAへの登録に踏み切りましたが、あえて手数料分を料金に上乗せしています。売上増ではなく、存在を知っていただくための広告と割り切っているからです。

  3番目はカードなどによる支払いを受付けず現金のみとしていることです。チェーンホテルでは、とても珍しいことではないでしょうか。カード会社からは再三提案を受けますし、キャッシュレス社会の促進という政府の方針もあるようですが、変更の予定はありません。薄利な商売のため手数料によって利益の半分近くを失ってしまうという事情もありますが、そもそもこれは利便性を享受する利用者が負担すべきであり、店舗側が負担する契約に納得がいかないからです。日本では疑問視する人が少ないようですが、利用者負担としている国もあります。価値と価格の一致、サービスは有料という感覚を啓蒙普及させたいのです。2番目と同じです。

  4番目は需要の小さな地方の郊外への出店が多いことです。これは12~14室という規模だから可能なのですが、車社会のインフラ施設として全国に展開していくという目的実現のためには当然果たすべき社会的役割です。地域振興や地方創生が叫ばれて久しいのですが、一過性ではない活性化のためには、地元に根付く宿泊施設が必須です。赤字が続く店舗も複数ありますが、撤退するつもりはまったくありません。最近、地方の自治体からの出店要請が増えており、優先的に取り組んでいますが、これも嬉しく誇らしいことです。

  5番目は海外居住者の利用が1~2%ととても少ないことです。数年来、政府の方針もあってインバウンド客が急増し、これを狙って新しい施設を増やしたりサービスを強化することが業界の大きな流れになっていますが、当社はまったく消極的です。お客様を選ばないというのが当社のポリシーですから避けたりお断りすることはありませんが、海外向けの集客は行っていません。二人だけで運営しているため言葉が通じると誤解されては困ります。世界中で親しまれているMOTELですから、気軽にご利用いただく外国人も少なくないのですが、積極的に増やす考えはありません。インバウンドは社会情勢に大きく左右されるため安定経営には大きなリスクになりますし、そもそも急激な観光客の増加と依存は地域の文化や生活を破壊する恐れがあり、無条件に歓迎すべきことではないという問題意識があります。

  6番目は、国籍・年齢・性別などの形式や学歴・職歴などにとらわれず、人間性本位で人生のパートナーのペアを支配人として採用し続けているということです。これは、けっしてきれいごとではなく、容易なことでもありませんが、日本社会や日本人の「常識」に対する大きな挑戦です。

  7番目は収益性や効率の最大化を追求していないことです。「シンプルで自由な、旅と暮らしをサポートする」というモットーに従い、お客様からの断片的な要望に引きづられてポリシーを曲げることはしません。売上高や利益優先ではなく、公正で透明で堅実な経営を大切にしたいのです。
創業以来ずっと不合理な規制や偏見に苦しめられ闘い続けてきました。要領よく許認可を得るのではなく、審議会の開催を求め、時には審査請求を行い、正面から議論を重ねてきました。その結果、旅館業法の改正に当社の主張が反映され、ある自治体では条例の見直しが行われました。こうした姿勢を失わないことこそ、ベンチャー企業の存在意義だと信じています。

 2019年、当社は世の中の流れにもムードにも乗りません。
 「社会的企業」の良き先例になることが、変わらぬ願いであり、覚悟です。


最近、仕事柄3年連続で総会にも行けていません。故に甲斐社長にお会い出来ておりません。
しかしながら、相変わらずの様子が伺え、大変頼もしい思いです。

来年こそはとの思いを秘めて、新年を迎えたいと思います。



Commented by アジア株太郎 at 2018-12-30 00:44 x
久しぶりの更新でしたね!
私も今年はほとんど更新をしておらず、放置しております。

投資の方も年始にビットコインのショートで痛手をおい、トレードしていない時期が長かったですが、
10月にNISA株を売却し、12月には大麻関連株を購入しました。
https://finance.yahoo.com/quote/ELLXF/community/

旅籠屋の記事も読ませていただきましたが、ポリシーはすごく共感できますね。
上場してしまうと、同じようにはいかないと思いますが、今後どうなるか注目ですね。

来年もよろしくお願いします
Commented by uniuni4562 at 2018-12-30 12:12
> アジア株太郎さん

お久しぶりです。
早期リタイヤに向け、それなりに仕事をしているので更新ができませんでしたw

旅籠屋という会社、投資家目線では。もう少し狡く・・・という思いがなくもないのですが、それ故の信頼感がクセになります。
もう一つのJ21ですが、ここも面白い会社です。

どちらも20年近いお付き合いになっていますので、今後ものんびり眺めていきたいと思っております。

来年もよろしくおねがいします。

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by uniuni4562 | 2018-12-29 13:51 | 旅籠屋 | Trackback | Comments(2)

10代で株を始め資産3億円達成、22年FIREしました。「裏道花山」を信条に嗅覚と閃きのトレード日記と、一味違うオススメマイナー銘柄をお届けします。 Twitter:zeni1_VN


by 銭1